ステラリス 開発者日記 第206回 Nemesisの演出

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更新情報

パラドックス社の公式フォーラムに
ステラリスの開発者日記 第206回が掲載されています。

https://forum.paradoxplaza.com/forum/threads/stellaris-dev-diary-206-directing-nemesis.1464165/

今回はNemesis DLCの演出というタイトルで、Nemesisを題材に拡張やDLCを作るときの心構え的なお話になっています。

以下パラドックスフォーラムの内容を意訳したものとなります。
※画像等はフォーラムより引用。
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ステラリス 開発者日記 第206回 Nemesisの演出

今回の担当はステラリス ゲームディレクターのgrekulfさんです。

冒頭の挨拶

みなさんこんにちは!

今日は、Nemesisのような拡張を演出するプロセスについて話したいと思います。

拡張とDLC

私たちが過去に話したように、強いテーマを見つけることは私たちが行う最も重要なことの一つです。
アイデアがあるときはいつでも(そしてたくさんります) 、私たちはそれを「ボックス」に分類します。
それぞれの拡張では、さまざまな 「ボックス」 から機能を選択しています。
ユートピアは内部政治とカスタマイズ関連、アポカリプスは戦争、メガコープは経済、フェデレーションズは外交でした。

その製作過程で、拡張には収まりきらないほど多くのアイデアがボックスの中に入ってくるので、これまでの拡張で得たアイデアの多くが新しい拡張へと移ります。
例えば、 「外交のボックス」 にはあまりにも多くの良いアイデアが含まれていたため、フェデレーションは 「良い」 外交に重点を置き、ネメシスは 「悪い」 外交に重点を置いていました。

拡張に向けての強力なテーマを維持することは非常に重要であり、なぜならそれはプレイヤーが強いファンタジー(空想)を形成し、それらのアイデアに対しての興奮が築かれるのを容易にするからです。
より焦点を絞った拡張は機能が相互作用する機会も多くなるため、多くの人が高く評価しているような深い相互作用をゲームに取り入れることも可能となります。

DLCでは強いテーマ性を維持することが重要ですが、どのような拡張でも、さまざまなタイプのプレイヤーに対応できるようにしたいと考えています。
例えばFederationsが協力と外交に重点を置いているのであれば、ゲームの好戦的な側面を楽しむプレイヤーにも新しいおもちゃを提供できるよう、Juggernautを追加するのは良い考えでした。

Nemesisでは

危機になること、そして銀河共同体を通じて銀河帝国を形成することは、いずれも外交に関連した我々のアイデアの一例です。
銀河系コミュニティーができたことで、プレイヤーが銀河系を破壊することを目的とした 「悪役」 を演じることができるようになるのは理にかなっており、それを突き詰めることで、そうした脅威への対抗力となることを目的とした機能を追加することは大いに意味がありました。

Federationsでは協力とより友好的な外交に焦点を当てたのに対し、Nemesisのテーマは対立する勢力間の紛争の構築により焦点を当てることでした。
私たちが本当に強調したかったのは、危機がどのように銀河を脅かすことができるかです。そうすればチャンピオン(カストディアン)がそれを阻止しようと立ち上がることができます。

私たちはまた、権力のバランスが変わる機会をもっと作りたいと考えていたのでカストディアンと権力がどのように腐敗する可能性があるかという考えを追求したいと考えました。
カストディアンが銀河共同体を銀河帝国に変えられるようにすることで、銀河系で起こりうるさまざまなタイプの危機の傾向を追求することができました。
銀河系のすべての生命に対する脅威ではないかもしれませんが、銀河帝国(と叛乱の可能性)は、ある種の外交的危機のようなものであるとみなされることを意図していました。

私の見方では、これらのアイデアを初期の状態から受け取って、Nemesisのテーマに十分に結びつけることができたことにとても満足しています。
これほど多くの強力なファンタジーをこのように組み合わせられることはめったにないので、この全体的なアプローチを取ることができたのはとても楽しいことです。

諜報活動

私はデザイナーとしての私の目標であるスパイシステムを前から作りたいと思っていた。
私は、スパイシステムが決定的すぎる場合や、座ってプログレスバーの進行を待っているだけで成功するか失敗するかのどちらかになるというのは好きではありません。

スパイ活動のシステムには、もっとストーリー性を持たせたかったのですが、「Ancient Relics」のために私が独自にデザインした考古学のシステムが、それを可能にしてくれました。
このシステムはEU4の攻城戦のように段階的に展開していきますが、コンテンツの「メインストーリー」の中にランダムなイベントやストーリーを挿入することで、より多くのストーリーテリングを可能にしている点が気に入っています。

考古学システムから学んだことで、我々のスパイシステムも同じように機能するようにしたかったのです。
ゲームディレクターとして、ゲームの制作ビジョンだけでなく、スコープ(機能の大きさや開発に費やす時間)にも責任を負っています。
私たちが考古学で行ったことに基づいてシステムを構築することで時間を節約でき、他の場所でより適切に時間を費やすことができるであろうことを私は理解していました。
Stellarisが使用する技術では、UIの実装には実際問題かなりの時間がかかります。
(システムを流用することで)UIを最初から作成する必要がないため(時間の)節約になります。
また特定の部品を再利用することは、システムや機能に何が期待されるのかについてすでにかなりよくわかっていますのでリスクの量を減らすこともできます。
部品の再利用に費やす時間はいつでも、他の機能の洗練化、バグ修正、クールな新UIの実装に費やすことができます。
ただし、完全にフリーであてはめられるわけではなく、必要に応じて十分な適化を行う必要があります。

スパイシステム自体が何を達成すべきかということについては、情報収集が大きな役割を果たすことを望んでいました。
諜報活動のシステムは、予測できすぎたり退屈に感じたりする可能性があるので、正確にするのは難しいです。
またスパイ活動の対象となっているシステムの経験を常に考慮しなければなりません。

また、このような新しいシステムを追加する際に考慮しなければならないのは、プレイヤーが既存のシステムとやり取りするための容量が限られているということです。
私たちは、プレイヤーが(機能を)使用することを選択した場合、それが楽しく魅力的なシステムであるものを作成する必要があり、プレイヤーが対話することを余儀なくされている新しいシステムを追加することは非常に危険であることに注意してください。
認知的負荷はGSG(グランドストラテジーゲーム)ゲーム用に設計するときには間違いなく注意が必要なものなのです。
ゲームをプレイすることを強制されていないだけでなく、プレイヤーがそれを使用したいときに楽しく、興味深いものであるという点で、スパイシステムは良いポイントまで到達したように感じます。

私たちは夢見たすべての事を達成することはできませんでしたし、私はシステムのよりインタラクティブな反スパイ活動の部分も見たかったのですが、私はスパイ行為がどのように行われたかについて全体的には非常に満足しています。
完璧ではありませんが私たちがすでに持っているコンテンツとスパイシステムが機能する方法はとても良いものであると感じています。

スパイ活動の基本的なシステムは考古学のシステムと同様に、ベースゲームの無料アップデート部分に含まれており、私たちやMod製作者が後からコンテンツを追加しやすくなっています。
システム自体を無料アップデートの対象にすることは、過去にも多くの助けになりましたし、時には完全にDLCの一部であったシステムを無料に変更することもありました。
ユートピアで導入されたアセンションパークは、もともとユートピア限定のシステムでしたが、私たちはどうしてもこのシステムを使いたかったので無料ゲームの一部とし、アセンションパークの一部(Biological Ascensionなど)だけがユートピアの一部となるように変更しました。
私たちはこの方法をとても気に入っていますし皆さんにもそう思っていただけると嬉しいです。誰もが勝者です!

インテル

情報収集をスパイシステムのとても重要な部分にしたかったので、それをプレイヤーにとって本当に良い体験にするために新しいIntelシステムが必要になるだろうとも考えました。

私は、プレイヤーがコミュニケーションを確立するとすぐに別の異星人帝国についての多くの事を理解する―という方法が好きではありませんでした。
私は異星人帝国に対してもっと神秘的に感じてもらいたかったし、銀河を探索するのと同じように、異星人帝国についてもっと知るためにはエイリアン帝国を「探索」しなければなりません。

インテルのシステムの焦点は、この新しい「探索」の角度に焦点を当てることによって、ゲームの初期と中期を強化することでした。
たとえあなたが戦争好きでも外交的でもないとしても、銀河とその住人についてもっと学ぶのは楽しいはずです。
Intelのシステムが触れているすべてのもの、そして他の機能との相互作用のためにそれはゲームの無料アップデート部である必要があります。
Intelシステム全体は無料アップデートの一部であり、またかなり改造(Mod化)可能な要素のはずです。

スコーピングの面では、エッジケースや、新しいシステムと既存の機能が相互に影響し合うようなゲーム内の小さな場所をすべて考慮したため、インテルは当初考えていたよりもはるかに高価なものになってしまいました。
特にStellarisのような大規模なゲームでは、情報を隠すためにUIを変更することは想像するよりも簡単なことではありません。

ゲームディレクターとして私は自分の開発時間をどこに費やすかも考慮する必要があり、もし私がIntelのような無料の機能に取り組むことに開発時間をかけすぎると、DLCの機能は薄くなりすぎ、プレイヤーはDLCの価値は低いと考えるかもしれません。
無料アップデートで十分な新機能を追加することと、DLCに新機能を追加することの間で、慎重にバランスを取っています。
どちらも異なる理由で重要だからです。

しかし最終的には、現在のIntelシステムを作るために追加の時間を費やす価値があったことは間違いないと思います。

危機になる

プレイヤーが危機的存在になることを許すという考えは、新しいものではありませんが、それは私たちがかなり前から考えていたものです。
しかし、今になってようやくそれを実現することができました。そのためにNemesis以上に適した拡張があるとは思えません。

「BtC(Become the Crisis:危機になる)」機能の目的は、プレイヤーが「邪悪な」行為を行い、銀河系支配に至るまでの過程でより強力な報酬を得られるようにすることでした。

このシステムは何度か改良されましたが、私たちが「危機レベル」によってより明確な進行パスを追加することで本当に正しい軌道に乗っていると感じました。

BtC用の新しいUIは非常に素晴らしく、非常に見やすい進行パスを持っているので、より明確なチャレンジとしてより良い印象を受けます。
ゲームデザインにおいて明示的な課題は、プレイヤーに直接提起されるもの(クエストのような)であり、暗黙的な課題はプレイヤーが自分自身を作り上げることができるもの(他のすべての帝国をBlorgのように友達にするような)です。

私たち(Paradox社)のGSG(グランドストラテジーゲーム)ゲームの多くに固有の弱点は、明示的な課題が多くないことです。
そのため、新規のプレイヤーが何をすべきかを理解するのが難しくなります。
ゲームにまったく慣れていないと、自分で暗黙の課題を見つけるのは難しいかもしれません。
HOI4でのナショナルフォーカス(国家方針(ツリー))、EU4やImperator(Rome)でのミッションはゲームにもっと明確な課題を加えることに成功した機能の例です。
暗黙のチャレンジは再現可能性と密接に関連しており、プレイヤーがその背後にある唯一の理由であるためプレイヤーにとってより強力な体験になる可能性もあります。

BtC機能ではプレイヤーがより脅威になり、銀河系への脅威が増すのを助ける目的を追加しました。
冒険やミッションほど直接的ではありませんが、それらは多くの助けとなりプレイヤーをやる気にさせることができるでしょう。

当初、BtC機能を複数の形(終盤の危機のような破壊的な力から、marauderのような従属的な力、あるいはshadowsのような操作的な力)にするというアイデアがありましたが、時間的な制約があったため1つのファンタジーをより強く魅力的にするか、水増し感のある複数のバージョンを用意するか、どちらかを選択しなければなりませんでした。
私は選択を迫られ、複数の理由から破壊的なファンタジーに焦点を当てることが最も理にかなっていると思いましたし、そしてただ単にそれが最も理にかなったファンタジーでもあるとも考えました。

塵も積もれば山となるで、「Become the Crisis(危機になる)」の出来には非常に満足しています。
皆さんもスターイーターを配備して、星から星へと銀河を消費していくことを楽しんでください。

カストディアンと銀河帝国

壊れたレコードのように聞こえるかもしれませんが、私が強調したいのは危機と戦うために保護者(カストディアン)を選ぶというサイクルを私がどれだけ楽しんでいるかということ、そしてカストディアンが権力を握り新たな外交的危機になるというサイクルです。
テーマ性が高く大衆文化(ある程度は歴史的に)からよく知られているファンタジーでもあります。

これらの2つの機能については、信頼できるシニア・コンテンツ・デザイナーが主に担当していたため、あまり多くの情報を得ることができませんでした。
銀河系帝国のアイデアと大まかなデザインは、銀河系共同体と関連して生まれたもので、Nemesisのゲームに追加する機会を得たことを非常に嬉しく思います。

銀河帝国は、プレイ中に目にする最も普遍的で一般的な機能ではないかもしれませんが、プレイヤーのファンタジー要素に対して非常に刺激的で、まるで手袋のようにフィットします。

まとめると

結局のところ完璧な拡張を行うことはできないと思いますし、手持ちのリソースで最善のチャンスを得るには多くの経験が必要です。
今回の開発者日記で拡張機能をどのように演出するか、またその際にどのようなことを考えればいいのかについて少しでも興味を持っていただけたなら幸いです。

また、Nemesisで素晴らしい仕事をしてくれた私のチームに感謝したいと思います。彼らがいなければ、このプロジェクトは実現しなかったでしょう。

———

今週は以上です。ありがとう!
来週4月1日にまた戻ってきます。
これは、Ver. 3.0’Dick’とNemesisのリリースのちょうど2週間前という最も有名な日でもあります。


以上

フォーラム内のやり取り(Q&A)

フォーラム内のやり取りで気になったものを紹介。

※管理人多忙のためしばらく休止します。

感想・まとめ

以上、Stellaris 開発者日記 第206回の紹介でした。

とんでもない文量だったのでとりあえず訳した…という感じになっています。
日本語が変なところもあるかと思いますが脳内で補完をお願いしますm(_ _)m

個人的にちょっと興味深かったのは、パラドゲーって4Xだと思ってた(そして各種メディアなどでもそう言われてますよね)んですが、grekulfさんはステラリスやHoI4、EU4などの自社ゲームをGSG(グランドストラテジーゲーム)として認識してるという点…。

実は社内では自分たちのゲームはグランドストラテジーゲームだという認識なのかしら?
ちょっと意外な発見でした(・_・)